朝の霧は眩しく。

"理想と現実" の "現実"側

過換気症候群

愛するみなさまお元気ですか。
すっかり秋ですね。
こちらは昼と夜の寒暖差がひどく、寒がりのわたしは上着を持ち歩かないと死んでしまいます。寒い……までは行かないけれど、涼しい、の強い版です。涼しい「強め」。人はそれを寒いと呼びます。



なんのこっちゃの挨拶ですが、お久しぶりです。最近は本当にどこにも出かける機会が無いので載せられる顔面がほとんどありません。数少ない顔面ファンの方はごめんなさいね。

なにから話せばいいかわからないので、まずは今日のことを、リハビリとしてぼんやりと。
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声が遠のく、というのは初めてのことだった。月並みだが、文字でしか読んだことのない感覚だった。それを体験できた、という意味では、今とても興奮している。嬉しくてこうして文にしたためている。


ちなみに、気分は当然最悪である。





話をしていた。母と、スマートフォン越しの父と、わたしで。先月から何度も何度も話をしている。

夫婦というのは、やはりバランスがとれているようだ。このような話し合いの場では、いつも母が怒りやすく、父がそれを宥める役割をしていた。しかし最近はまるっきり逆で、冷静さを欠いて怒鳴るように話す父を制御するのが母の役目だった。

怒りなのか、失望なのか。父の声色に乗せられた感情を読み取ると、悲しくなる。

父は、怒りながらも、どうして話してくれないんだ、お父さんもお母さんもお前の味方だと言ってくれる。それは嘘ではないと思っている。だけど真実だと信じきれない自分がいる。



目を閉じながら話を聞いていたわたしは、ふいに、それはもうなんの前触れもなく。耳と頭から、音や言葉が徐々に消えてゆくのを感じた。

すーっ、という音がついているような、見事な消え方だった。最後だけ、脳がプツン、となって。その瞬間、わたしは呼吸ができなくなっていた。

スピーカーから流れる父の声は、もはやなにひとつわからない。言葉が情報として一切入ってこない。浅い呼吸はゼェゼェと大きな音を立て、恐怖だけが脳を充たした。

まさに頭が真っ白、というわけではなく、どちらかといえば真っ黒だった。さっきまで聞こえていた言葉が闇に消えてしまった。怖い。

指を口の中に突っ込み、強く噛み締めて、なんとか正気を保とうとした。涙と鼻水と涎が混じり、手のひらはめちゃくちゃだった。そのあいだも父の声は絶え間なく流れ続けている。なにを話しているのかわからない。話すのをやめてほしかった。向こうにわたしの呼吸音は聞こえていないのだろうか?耳から入ってくる言葉が雑音にしか聞こえない日が来るとは思いもしなかった。なにもかもわからない。わからない。

途中、母がわたしを呼ぶ声がしたが、ようやく会話が聞こえるようになった頃、わたしの一連の行動は演技だと疑われていることに気づいた。


悲しくなって、わたしはもう少しだけ苦しい振りを続けた。






噛み締めた指は赤い痕を残している。そういえば、明日はやっと病院に行けるのだった。