朝の霧は眩しく。

"理想と現実" の "現実"側

罪悪感

私には大切な人がいる。家族や恋人ではなく、元バイト先の後輩だ。異性の後輩だが、恋愛感情はなく、私のことを大切に思ってくれている人なので、とてもありがたく、私も同様に彼を大切に思っている。4年の付き合いだが、大学生活で出会った人のなかでもとくに長い時間を過ごしてきた。


先日、偶然彼に会った。3月に私がバイトを辞めたので、以前に比べて会う頻度はかなり少なくなり、久しぶりだった。だがたまに交わすLINEでも常に彼は私を気にかけてくれていた。

たわいのない会話の中で、彼はさりげなく「最近ちゃんと学校行ってますか」と聞いてきた。少し間をおいて私は「行ってない」とヘラヘラして答えた。すると彼は呆れて驚いた顔をして「まだ行ってないんですか?心、入れ替えたんじゃなかったんですか」と言った。また私はヘラヘラした笑いを浮かべ、返そうにも返す言葉が見つからず、ただ黙った。その様子をジッと見ていた彼は「4年間行ったのに今更辞めるのなんてもったいないですよ」と、最もらしい言葉を続けた。

その後は「自分の周り、学校関係で悩んでる人多いんですよね」なんて世間話をしてくれたが、私は引き攣った笑みだけを張り付けていた。返す言葉をずっと探していたが、ついに見つからなかった。

叱られてしまった。呆れられてしまった。失望させた。その罪悪感だけがぐるぐると渦巻いていた。

「自分の親が死ぬよりアサギリさんが死ぬ方がつらいです」と、彼は私の目を見つめながら、困ったような顔をして言った。大袈裟だな、と笑ったが、私も困ってしまった。ただの他人で、かつ可愛い恋人もいる彼がこんなに私の心配をしてくれるのかと。比喩にしても、彼のご両親の不幸より私の不幸が嫌だと、そんなことを言わせてしまうほどに心配をかけているのかと。1つ下なので歳は変わらないが、あくまで私が守るべき後輩の彼に気を遣わせている自分が情けなかった。

今後一切心配はかけまいと奮闘したいところではあるが、それを約束できない自分の弱さもまた情けなく、ただただ気分が沈んだ。


帰ると彼から「またカラオケにでも行きましょう」と連絡が入っていた。また連絡するね、と返したが、会う決心はしばらく着きそうにもない。

今日も学校に行かず、1人で過ごした私だった。